2013年10月10日木曜日

68 「ピアノシュラハト」宝塚行った。

2013年9月27日(金) あきはれ

例による。

9月21日、宝塚ベガ・ホールにて行われた「Pianoschlacht ベンヤミン・ヌス ピアノリサイタル 〜浜渦正志作品集〜」及び関係楽曲のレポート。基本的な情報は主催者のホームページなどを見てね。


〓開演に先立ち〓

9月16日にも東京の白寿ホールで同演目での演奏会が催されたが、予約分で満席という情報が出たために断念した。実際は当日券が数席出たうえに、台風が直撃したこともあって電話でのキャンセルと座席の譲渡など非常な対応がいくらか取られたようだがさておき。

朝の東京から昼の大阪、電車で清荒神駅へ着くと、すぐ目の前に宝塚ベガ・ホール。当日券買って列に並ぶ。気温30度の晴天の中、開場15分前で既にできていた行列が100人くらいに成長したところで開場。途中でチャリのおっさんが話しかけてきて、すごい列ですねって驚いてたから普段はこんな並ばないのかも知れない。見た限り、お客さんは3割〜5割がご高齢の方!驚きました。普段から年配の方が多いホールだそうな。

物販にもそのまま長蛇。「δ・ε・T_Comp1」のCDとスコア、「Sanzui」のスコアを買いましたが、「Sanzui」が収録されたヌスのセカンドアルバム「EXOTICA」は早々に完売してた。半分くらいこれ目当てだったのに!
スタッフにはMINAさんも紛れていて、目が合ったら笑顔で会釈してくれたから憶えてもらえてるのかしら。それともイメちゃんTシャツに会釈してたのかしら。

ホールはあまり大きくはないけど、パイプオルガンあり、シャンデリアみたいなのありの大変素敵な様式だった。開演まで、宝塚市文化財団のイメージキャラクターでゆるキャラグランプリ2013にも出場したらしい「たからん」が印刷されたクリアファイルをいただいたり、注いだだけで数百円のオレンジジュースをいただいたり、プログラムを読んだり。


13:30開演。
演奏中に「レラレッ♪」を鳴らす若者は絶えない。


〓ベンヤミン・ヌス〓

ベンヤミンの演奏は過去にコンサート「Legends」や「Distant Worlds」で間接的に聴いており、技巧的には申し分無いこと、ダイナミクスやノリも紛れもないプロであることは知っていた。いざ実際に音が耳に入ると…やはり申し分無い。

特筆したいのは、浜渦氏も強調するようにピアノ・フォルテの幅だ。オーケストラにも劣らないと思える大音響がピアノ一台で体験できることに衝撃を受けたかと思えば、わずか一瞬後には、過去のピアニストは表現しきれていなかった弱音を軽々と撫でていることに声が漏れそうになる。

ベンヤミンは15歳くらいから浜渦氏の音楽を聴き始めて、自らコピーしたり倣って作曲したりもするらしく、私達と同じ一人の大ファンとして10年近く浜渦氏の音楽を弾いていたそうだ。仕事だからとか有名な曲だからという理由は最初から無く、自分の感性に訴える音を奏でるということに一点の曇りも無い彼の演奏は、狂ったテンションやアルペジオでも決して投げやりにならず、個性たっぷりの和声やグルーブも自分のものにして歌いきっていた。作曲者は99%思った通りに弾いてくれると評価していた。

私が聴いた限りでは、少々のミスタッチはともかく、ややテンポが速過ぎて和声がぼやけたり、内声に埋もれた副旋律が聴こえにくいままだったりした部分も僅かにあったように思ったものの、強弱やテンポの微妙な揺れなどの呼吸感や和声のバランスは、今までに聴いた作曲者本人の演奏とほぼ同じだった。浜渦氏は仕事で関わったミュージシャンに対して、どんなに普段と違う音を鳴らされてもファンの前で悪く評価することは今まで一度も無く、よく完璧という言葉で称賛していた。それだけに、今度の99%とはむしろ彼の本当の声ではないかと僕は思う。

「襲撃」や「決戦」などではCDの黒田亜樹さんと随分違った弾き方で勉強になったが、欲を言うと「決戦」は今まで一度も演奏されていないSpecial Versionでもよかったと思う。それにしても23,4歳でデビューしたての彼が、尊敬する作曲家に曲を書いてもらった喜びやプレッシャーも大きかったのではないかしら。
てか日本語喋りすぎわろた。


〓宝塚ベガと浜渦氏〓

休憩時間はひたすら調律師さんがポロンポロン。前半は最高音の金属音が気になった。
終演後にホールの職員らしき方と10分くらいお話したんだけど、ピアノは4台持っててその日はスタインウェイで鍵盤が象牙でできているとか。近くには佐渡裕さんがよく使う4つホールを持ってる場所があるらしいけど、ベガは古くて小さくてもなにせ音響が良いから好んでわざわざ使うプロの演奏家もいるそうな。

それもそのはず、後半浜渦氏が語るには、かの偉大な「浜渦の父」浜渦章盛氏がこのホールの設計に携わっていた。その場所で自身の演奏会を開いただけではなく、正志少年と弘志少年をも乗せてよく歌わせていたというから人に歴史ありかな。今でも、宝塚市主催で海外からも参加を募る日本屈指の合唱コンクールはこのベガで行われている。
それにしてもさすが関西なのか、浜渦さんは普通に喋っているようで笑いの絶えないトークだった。IMERUATやモノトークとは違って若者受けはしなかったかも知れないが客層から考えても正解だったろう。


〓新曲など〓

■日本では初演?「Sanzui」日本をテーマにいろいろと主張した曲らしいけど、スケールの大きさと流れの速さについていけず、その場でメッセージは読みきれなかった。弾いてみると時に目まぐるしいほど表情豊かで構成もしっかりしていて頼もしい。

■現在全12曲の「エチュード」。いきなりCの連打やトリル地獄、終いには肘を使わせる自由な感じはさすがアホ奇才。熟年の狂った和声や大音響には声が胃から漏れそうになる。
エチュードはともかく、まとまった音源にしてスコアも出版した標題音楽「Sanzui」にさえAdditional Partを後から書く癖があるあたり、作曲者としての気持ちは察するものの、受け手は賛否両論かと思う。

■「δ」帰宅後もよく聴いてみたけど、本人が絶対音楽と言う通り、音が赴くまま、言えば弾き遊んだままの姿のような感じがよりいっそう強くなってるし、開離した和音さえ除けばどれもめちゃくちゃ弾きやすい。極度にストレートな表現も多ければ、極度におもろいことしたいっていう気持ちが出ている部分も感じられる。

■「ε」は今回演奏されなかったけど、CDの中では唯一標題音楽ということでかつて無いほどに透き通ってる。CD「δ・ε・T_Comp1」には「ε2」が収録されていないのが物凄く気がかり。

■「Mißgestalt」どうやるのかと思ったらなかなか破壊されてて「Feltschlacht」のソロが混ざったり原曲のピアノソロの部分はあまり聴かせどころになってなかったり。ただし原曲の要素も相まって、迫力はその日の演目の頂点。スタンディングオベーションで叫ぶ気持ちというかその衝動も大変よくわかる。

■アンコール「X01」最初は作曲者の精神を危ぶんだけど、プロが演奏してくれるとなるほどかわいくてウケて終演。

譜面に決定的なミスが無かったのは初めてかも知れない。
…と思ったけど、後に「Exotica」が手に入ってみたら「Ka」のラストにある単音が決定的に違った。えええぇ。


〓終演後〓

例によってサイン会。毎度よーやるな!ベンもよくペン持てるな。どうやら浜渦さんには顔憶えてもらえてたみたいで嬉しかったー。

また並んでる人を見てたら関東でよく見る顔も一個か二個あって恐れ入った。


清荒神の山の方に神社があるそうです。
近くにレストランとか無いのが悩みだそうです★☆★